[本日の写真]

2015.7.22

“ママはどこ”

「国立競技場」

 40代の前半、仕事場が神宮外苑に近い青山通りに在ったことから、国立競技場のトレーニングスクールに二年間、週二回通っていた。最初の半年間は、トレーニングの基礎を習いつつ競技場の施設(プールや風呂場、そしてトレーニングマシンなど)の使い方を教えて貰った。ストレッチから始まるメニューのメインイベントはランニングなのだが、あの国立のトラックを走れるのだ。400mトラックなのだが、内周は選手たちが走っていて、我々生徒たちは外周の2レーンを遠慮がちに走ることになる。計算すると一周500mほど走ることになるのだが、何より、一流選手たちと一緒に走れる喜びは大きかった。
 そのトレーニングのなかで心に一番残っているのは、ランニングの後、内側のフィールドの芝生に寝転んで一休みできたことだ。仰向けで大の字になり夜空を見上げると、そこには邪魔者のない大きな空が広がっている。これは、都会ではなかなか経験が出来ないことだ。今は無き国立競技場の周りは、東京の真ん中としては高い建物がほとんど無く、緑の多いオアシスなのだ。
 その国立競技場、東京オリンピックに向けての建て直しに、計画の見直し再スタートを首相が決断した。デザイン選定、見積もり、工期、全てが大幅に計画ミスで、責任の所在が無い相変わらずの「日本お役所無責任体質」が露呈した。大体、オリンピックをはじめワールドカップと、スポーツをみんなで楽しむと言う本来を忘れて、国威発揚と商業主義が前面に出てきているのが、根底的な問題なのだ。競技場のデザインが経費を莫大にしている要素であることに間違いは無いが、8万人収容規模と言うIOCやFIFAの条件も大きな要因であろう。
「観客も含めてみんなが一同に集まってスポーツを楽しめる場」と言うのは気持ちや雰囲気としては解る、だが、開会閉会式のセレモニー以外、実際の競技のとき、8万人の何パーセントが身近に競技の迫力を楽しめるのか、オリンピック後の後利用で一番利用されるであろうコンサートにしても、観客の大半はモニターを見ていることだろう。私なら家の大画面のテレビで集中して競技を観るだろうし、みんなと喜びを分かち合いたいと言うなら、パブリックビューイングへ出かけるだろう。普段からアナログ人間を標榜して、電子媒体に否定的な私でも、競技場に莫大な金をかけるよりも、パブリック媒体をみなで楽しめる場所を充実させるほうがはるかに実質的なんじゃないかと思う。費用の一部でも、身近でスポーツを実際に楽しめる競技場をたくさん造って欲しい。その場所にパブリックビューイングがあれば、理想的じゃないか。


[ARCHIVE]

「国立競技場」「忘れられた巨人」「夫唱不随」「映画『コーヒーをめぐる冒険』」
(2015-07-22) (2015-06-23) (2015-06-01) (2015-05-02)
「素材ミックス」「怖い顔」「高梨沙羅」「食べる」
(2015-04-15) (2015-03-18) (2015-02-24) (2015-02-10)
「オイルド」「八戸」「ベースキャンプジャケット」「赤瀬川原平さんを悼む」
(2015-01-14) (2014-12-15) (2014-11-26) (2014-11-01)
「水漏れ顛末記」「映画『リスボンに誘われて』」「電動アシストつき自転車」「映画 最強のふたり」
(2014-10-14) (2014-09-30) (2014-09-17) (2014-09-03)
「戦争」「京都の平熱」「ブラジルW杯」「タイプライタークロス」
(2014-08-19) (2014-07-26) (2014-07-15) (2014-06-24)
123456次のページへ>>
351件中: 1から 20件

● この「デザイナーズルーム」へのご意見、ご質問のある方は下記のアドレスへE-mailをお送りください。
デザイナー 武捨光晶/musha@mvj.biglobe.ne.jp

株式会社ビアスポ beaspo@mua.biglobe.ne.jp
Copyright(C)2012 beaspo Corp. All rights reserved