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2010.11.4

“一触即発の出会い”

「ケパネックセーター」

 今年の秋・冬の新製品で、『ケパネックセーター』と命名した商品を発表しました。ケパネックと言うのは、トルコの遊牧民で羊飼いの『ユールック』が防寒のために着ていた独特のコートのことです。
 古い民族衣装の資料の中に、荒涼として凍てつくトルコ内陸の高地で羊を追う羊飼いが、異様なコートを着ている姿を見つけました。それは粗く分厚いフェルトで出来ていて、まるでティーポットを保温するカバーの頭に穴を開け、すっぽりとかぶったようなものでした。
 ウールは繊維の特徴で、縮絨する性質があります。ウールの繊維の表面は、細かいうろこで覆われています。このうろこが人の髪の毛でもおなじみの『キューティクル』で、瓦屋根のように一定方向に角を突き出しています。さらにウールは繊維が縮れていますから、繊維同士はどんどん絡み合っていきます。この基本的な性質を利用して作られる素材が、フェルトです。最近は趣味の手芸などでも一般的ですから、目にしたことがある方も多いと思います。繊維にする前の毛の塊をたたいたり針で刺したりしていくと、硬く固まっていって様々な形や模様が作れます。
 剪ったばかりのウールはうろこの角も強く立っていて、縮絨させると強固な板状のフェルトを作ることが出来たのでしょう。トルコからモンゴルへつながる大蒙古帝国の時代からこのフェルトは遊牧民の移動住宅『ゲル』として現代まで利用されています。そして、衣料としても利用されて、それが『ケパネック』であったのです。
 この『ケパネック』にインスパイアされましたが、このまま現代の都会生活に持ち込むわけにはいきません。ビアスポでは、柔らかい極上のウールのニット地を縮絨させ、適度な厚みと、暖気を逃がさないしっかりした生地に仕上げています。そして、フェルト化した素材が生地の端から糸がほつれていかない性質を利用して、極力縫製部分を減らし、切りっ放しのシンプルなデザインにしています。
 そしてこのシンプルさが、人類の着るものの歴史をさかのぼらせてくれるのでは、と思ったりしているのです。


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