[本日の写真]

2012.3.22

“鰻を待ちながら”

「ジャクソン・ポロック」

 ジャクソン・ポロックは好きな画家の一人だ。ポロックは現代美術の巨匠だから、好き嫌いは別としても良く知られていると思う。
 ポロックを有名にしたのは、“ドロッピング”という技法で描かれた抽象絵画なのだ。“ドロッピング”というのはキャンバスを床に敷き、ペンキなどの塗料を筆やその他で滴らせるというもの。偶然性に支配されるだろうから、誰にでも描けそうに思う。かく言う私もやったことがある。だが、偶然からは決して傑作は生まれなかった。ただただ色が混ざって汚くなるばかりだったのだ。ポロック以降“アクションペインティング”という分野が出来て、様々な画家がぶちまけたり体をぶつけたりしたが、ポロックを超えるものが無かったから、やはりポロックは天才なのだ。
 ポロックがこの“ドロッピング”の作品を発表したのはわずか4,5年間のこと、その前はピカソやミロのような絵を描いていた。上手い絵なんだが、やはり亜流を出ない。そんな時、多分偶然“ドロッピング”を見つけてしまった。ペンキの種類を試し、テクニックを磨いていくうち、誰も表現したことの無い抽象絵画の傑作を生み出した。
 抽象絵画というと、絵の前で腕組みして、いかにも解った風をしていて結局はさっぱり解らないものが殆どなのだが、ポロックは私には解りやすい。まずきれい。ぐちゃぐちゃな色の組み合わせが、決して汚さを感じさせない。そしてドロッピングがリズムを感じさせ、まるでジャズの演奏を聴いているようなのだ。そんな風に感じさせるのは、もちろん色のセンス。研鑽され無意識でも生まれるドロッピングのテクニック。そして、何よりも集中力を高めた精神性にあるんだと思う。
 そんなポロック、4,5年経つと、ドロッピングに描画で具象を感じさせるものを混ぜるようになる。私に言わせれば、「全然良くなくなった」なのだが、ポロックの気持ちも理解できるような気がする。ドロッピングというテクニックの中に埋まってしまって、自分で自分が表現しようとしているものを失ってしまいそうな恐怖感が起こったのだろう。この時期、黒一色を使った前衛書道のような作品を書いていて、“禅”の境地のようで、私は好きなんだが、その精神性を突き詰めていくことにも進むことが出来なかった。
 結局、“ドロッピング”以上の評価を得ることが無く、悩み抜きアルコールにおぼれ、泥酔中の運転で、若くして死んでしまった。
 意外に数の少ない“ドロッピング”作品。ポロックの精神力がもっと強かったら、更なる傑作が生まれていたのじゃないかと思うのは、残念ながら、常人の浅知恵なのだ。


[ARCHIVE]

「ビジネス紳士」「気配」「映画『アーティスト』」「シンプル」
(2014-06-13) (2014-06-04) (2012-10-17) (2012-09-04)
「競歩」「縛られたくない」「アイビールック」「横好き」
(2012-08-08) (2012-07-25) (2012-07-03) (2012-06-13)
「怒るおじさん」「小腹」「習慣」「極薄」
(2012-05-29) (2012-05-16) (2012-04-18) (2012-04-04)
「ジャクソン・ポロック」「深読み!日本写真の超名作100」「フェチ」「今年の暖房」
(2012-03-22) (2012-03-06) (2012-02-21) (2012-02-07)
「スカート」「長い一日」「特権意識」「くつろぎbeaspo」
(2011-11-16) (2011-10-25) (2011-10-12) (2011-09-15)
<<前のページへ1234567次のページへ>>
351件中: 21から 40件

● この「デザイナーズルーム」へのご意見、ご質問のある方は下記のアドレスへE-mailをお送りください。
デザイナー 武捨光晶/musha@mvj.biglobe.ne.jp

株式会社ビアスポ beaspo@mua.biglobe.ne.jp
Copyright(C)2012 beaspo Corp. All rights reserved