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2012.10.17

“浜の散歩の帰り道”

「映画『アーティスト』」

 フランス映画で初めてアカデミー賞を獲った『アーティスト』を観た。いまどき白黒でサイレントと言う代物だ。こんなことをするのはノスタルジーをベースにした実験的な試みで、その種の通好みを狙ったものと思われたが、大きく裏切られた。
 とにかく面白かった。話は単純なメロドラマなのに、最後まで引き込まれてしまった。先ずは俳優の演技が良い。主演の男優はサイレント時代のハリウッドスター、“ダグラス・フェアバンクス”や“ルドルフ・バレンチノ”ばりのルックスで、彼らよりはるかに上手い演技力で無声ながら観る者を画面にひきつけ、その上“ジーン・ケリー”を髣髴とさせるダンスも披露する。女優は絶世の美女と言うわけではなく、コケティッシュでみんなに好かれる顔立ちで、これが口元にほくろを描いて、いかにもハリウッドのスターに成り上がっていく様が愛らしくて、大変良い。そしてもう一人のスターが主人公の愛犬(ジャックラッセル・テリア)で、元々しゃべれないのだから、サイレントは当たり前で、人間以上の演技力を発揮するのもうなずける。
 白黒画面は、今ではフィルムで撮ることは不可能だろうから、デジタルで撮って、変換するか、カラーフィルムで撮ってからデジタル変換するしかないだろうから、どちらにしてもデジタル処理なので、最近の白黒映画にはフィルム時代の黒の深さや、色合いが望めないと思っていたが、この映画ではそこのところの質も高く、モノクロの丁寧な諧調を楽しむことが出来た。
 現在の映画の主流は、CGや3Dや音響サラウンドを駆使して、観る側の五感を一気に画面の中に取り込んでしまおうとする。そこには、現実を超えたファンタジーを体感させようとする映画の本流があるのかもしれない。しかし、この映画を観て、せりふの無い役者の表情から心を揺さぶられ、白黒画面から暖かな色彩を十分に感じられた。単純な表現だからこそ観る側がそれに確かな呼応をして、じっくりと味わうことが出来るのだ。こんなことが、いまやさまざまな物や事の中にいくらでもあるのではと思わせてもくれた。


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