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2014.6.24

“店の一押し「越の景虎」”

「タイプライタークロス」

 今シーズンの新商品に“タイプライタークロス”を使ったシャツをラインナップしています。以前から展開していた“ローン”と同素材なのですが、ローンの中で最も高密度の織物を“タイプライタークロス”ということが分かり、改めて企画しなおしてみました。
 “タイプライタークロス”というのは文字通りタイプライターに使用したもの、細かく言えば“タイプライターリボン”の素材のことでした。タイプライターそのものを知らない世代が多くなったとは思いますが、我々には懐かしい、ある種の憧れの道具です。和文タイプというのもありましたが、それは特殊な専門家の道具で、ほとんどは英文です。仕組みは、現在のキーボードと同じようにキーを叩くとアームが動き、アームの先についている活字がインクを染ませたテープを通して紙に印字すると言うものです。そのインクを染ませたテープが“タイプライタークロス”を使用したリボンで、黒インクと赤インクを上下に分けたリボンでした。
 このリボンに採用された素材に要求されるのは、薄く、表面が均一で文字がむら無く印字出来、なおかつ強度があることでした。そこで開発されたのが“タイプライタークロス”。先ず、インクの吸収が良いためには綿素材。そして、出来るだけ細い糸を高密度に織り上げること、さらに強度を要求されることから、繊細な双糸より無骨な単糸使いでした。
 このような条件で開発された素材は、その後、ファッション素材として使われていくことになります。主に使われたのが、ダウンジャケット。ナイロン素材が主なダウンジャケットですが、アウトドアウエアを街のファッションとして着る流行の中で綿素材のダウンジャケットが企画され、この“タイプライタークロス”が再脚光を浴びたのです。ダウンジャケットの素材としては、先ず、ダウンが吹きださない織り密度。さらにダウンの柔らかさ軽さを殺さない薄さとしなやかさでした。
 この“タイプライタークロス”をシャツに使ってみることにしたのです。結果、綿素材として究極まで突き詰めた製作工程は、他の素材と比較できないほどの着心地感を作り出しました。薄手高密度な綿素材の着心地で言えば、高級ワイシャツのブロードを使ったものがあります。フラットでやさしい肌ざわりではブロードにかないませんが、張り腰の強さから来る肌への接触感は絶妙です。さらに製品洗いでシワを出すことで肌にべったり接触せず清涼感はさらに増しています。
 英語でタイプを打つ機会などありそうに無いのに、やたらイタリア製のタイプライターにあこがれたのも大昔の話のよう、その後の“ワープロ”を使いこなせず、今ではパソコン、ほぼ片手打ちで四苦八苦しながらこのコラムも書いています。時代が、道具が、見て分かる理屈からどんどん離れていくことについていけない私ですが、“タイプライタークロス”シャツの肌ざわりを素晴らしいものと感じることができる。そんな自分自身を信じられます。


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