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2014.9.3

“愛犬エムの肖像”

「映画 最強のふたり」

 少し前のフランス映画である。ストーリーは、パラグライダーの事故で頚髄損傷を負って首の付け根から下が全く感覚のない大富豪の障害者フィリップと、スラムの黒人で、失業保険のために彼の介護人に応募したドリスの物語。面接を受けた証のサインだけが欲しかった介護人の経験も興味も何もないドリスを、保護と憐憫の今迄の介護にへきえきとしていたフィリップが面白半分に採用したことから始まる。顔しか動かせず車いすのフィリップは、介護の常識を外れた扱いをするドリスを最初は戸惑うものの、ドリスの障害者であることを意識させない人としてのストレートな扱いに次第に心を通じ合っていく。
 車いすのまま乗せられるバンをやめ、高級スポーツカー・マセラッティの助手席に乗せ、スピード違反で警察に追われたり、下半身不随の男に性的興奮はないのかとぶしつけに聞いたりと、障害者への遠慮がないことが、笑いとともに見せられて小気味良い。
 フィリップには文通を続けている女性がいて、自分が障害者であることを隠していることもあり、手紙のやり取りだけで我慢していたが、それをドリスが直接会ってみるようにたきつける。お膳立てができてレストランで待ち合わせるが、悩みぬいてすっぽかしてしまう。
このような不安は誰しも経験するものだが、障害者ゆえの不安はさらにきついものだろう。
 結末は言わぬこととして、気持ちよく最後まで観ることができる映画だった。障害者を前にすると、その障害の重さを憐憫としてみることで、とかく、こちら側からストレートな心を閉ざしがちになる。そうなると、障害者も心を開くことがない。五体の不自由な彼らは人としての表現の手段を極端に限定されているのだから、心を通じ合わせることがどれほど大事なことか。身近な問題として、年寄りの介護にも同じテーマがあるように思う。
 この映画が、実在の人物二人をモチーフにしているのも、この映画を単なる娯楽コメディーにしていない。


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