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2014.9.17

“朧影”

「電動アシストつき自転車」

 人間、快楽におぼれていくタイプと、ストイックに我慢できるタイプに分けられるのかもしれないが。肉体的生理的な気持ちの良さは、余程強い抵抗力が無ければ、ほとんどおぼれていくのではないかとも思う。麻薬が肉体をぼろぼろにしていく結末を思えども、その時の快楽には抗し難いのだ。
 スピードと言うのにもこの麻薬に近いものがある。経験しない人には理解しにくいことなのだが、スピードも快楽におぼれていく。オートバイを例に挙げると、免許の制度にも関係するが、乗り始めの最初は50ccの原付バイクから始まり、そのスピードとパワーの快楽を経験すると、次ぎ次とエンジンの大きさをステップアップして250,400、750、それ以上と快楽の追求に歯止めが利かなくなる。オートバイに乗る人間が全てジャンキーになるわけでもなく、レースの世界に飛び込んでその追求を続けられる稀な人間も居るわけだけれど。
 最近この快楽が、自転車の世界にも現れてきた。我々のようにロードレーサーという最も早く走れる可能性を持つ自転車乗りには、この快楽は付き物だ。しかし自転車自体に無限の可能性を秘めているとしても、エンジンは乗る人間のパワーで限界がある。我々のような年寄りは、300キロ出せるF-1レーサーに50CCの原付エンジンを載せて走るようなものだ。悲しいかな。
 ところが最近この自転車の世界、と言うよりもママチャリの世界にとんでもないマシンが出現している。“電動アシストつき自転車”という奴だ。ママチャリボディーに充電池を組み込んでモーターで漕ぐ力をアシストする。乗ってみてビックリ。軽い漕ぎ出しでピュ-ッときた。ケンケン乗りで漕ぎ出したりすると、自転車だけ持っていかれたりしてきわめて危険だった。上り坂など普通なら立ち漕ぎでやっとだったり、押していくところを苦も無く登れるのだから、確かに素晴らしい。非力な年寄りにはありがたい道具だと思う。
 でも、このマシン、使い方を間違えると恐ろしいことになる。最近の自転車通勤でたびたび経験することだが、裏通りを強烈な出足とハイスピードでレースまがいの走行をする輩が増えた。そのほとんどは、ヤンママとパワーあふれるおばちゃん。ヤンママにいたっては、前後に子供を乗せていたりする。ヤンママにしてもおばちゃんにしても、多分、車や原付の免許を持っていないのだろう。基本の交通ルールを知らない上に、普段もてあましているパワーをアシストにぶつけてくるからたまらない。初めて知ったスピードの快楽、もう誰も停められるものは居ないのだ。


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