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2015.2.10

“静物”

「食べる」

 朝食にウインナーソーセージを食べようと、新しい袋を開けてフライパンで焼いた。口に入れてみるといつもの味と違い、かなりすっぱい。袋を確認してみると初めての商品で、昔ながらの味と製法と書いてある。成分表を見てもすっぱい要素は確認できない。そこでふと賞味期限を見ると、3,4日期限切れだった。まさかと思いながら、もう一度少し食べてみる。先入観を払いながら結局食べきってしまったが、悪くなっていないという確信は無い自分がいた。
 50年前だったら、賞味期限など未だ無く、悪くなっているものは口に入れたり、においを嗅いだ瞬間に判断できたものだ。それに、多少腹に入れても毒に耐えられる丈夫な消化器も持っていた。それが今では、すっかり食品行政の『食の安全』に過保護に育てられているようだ。確かに、生産物から遠くにいる都市生活者が大半の今の社会、食品の安全性は社会生活の基本であることに異論は無い。肉まんにゴキブリが入っていたり、ハンバーガーにビニールが入っているのはイヤだ。
 だが、別の見方をすると、人間も動物だとすれば食べることは生命を維持するための基本中の基本だ。食べることを他人のコントロール下ではなく自らの判断が出来なくなってどうするんだろう。狩猟をしたり採集をして生命を繋いできた人間は、火を使うことを発見して大きく発展した。それまで『生の食材』の毒や腐敗を本能として切り抜けてきた人間にとって、火は『食の安全』の大革命であったのだ。やがて、農作物を作り、家畜を飼育し、魚を養殖して安定的に食材を確保するすべを得て、今の人類があり、我々の生活がある。
 異物混入、賞味期限切れ、不当表示、過剰包装と、これからも『食の安全基準』は厳しさを増していくことだろう。それとは別に、美味いものへの飽くなきエスカレート中の『食文化』も歯止めを知らない。
 この『食』の在り様はわれわれ人間をどのような世界へ導こうとしているのか、不安を感じ始めた。


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