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2015.5.2

“メランコリック”

「映画『コーヒーをめぐる冒険』」

 原題は『oh boy』というのだが、この『コーヒーをめぐる冒険』でもよいかもしれない。
話は、ある朝、恋人とうまくいってない主人公の青年がコーヒーを飲み損ねたところから、ついていない一日が始まり、様々なエピソードのポイントで必ずコーヒーを飲み損ねていく。舞台は現在のベルリン、大学を勝手に中退して仕事にも就かずふらふら生きている主人公は、飲酒で運転免許を停止され、中退が父親にばれ仕送りが止められ、引っ越し先の隣人親父に人生の愚痴を聞かされ、電車では無賃乗車を取り締まられる。さらには、知り合いの俳優の撮影現場で、ベタな反ナチ映画での演技を見、再会した旧友の女の子が様変わりしてきれいになっていて、前衛演劇の舞台女優としてエキセントリックな演技をしている。その子と、身体の関係を持ちそうになるが、寸でのところで踏み込めない。落ちこんだ気持ちを癒そうとバーに入ると、酔っぱらいのジジイにつかまって、戦争時代の話を聞かされる。ところが、そのジジイが店の前で倒れ、病院に運び込むが死んでしまう。その爺さんには身寄りがなく、ファーストネームだけ教えてもらった青年は、ようやく朝のコーヒーを飲んだというわけだ。
これが初監督作品というヤン・オーレ・ゲルスターはまだ30代の後半という若さで、ドイツのアカデミー賞を総なめしたらしい。『青年の憂鬱』という題材は、いつの時代にも共通のもので、素直にこちらの気持ちの中に入ってくる。青年期は、自らの存在を真正直に見つめてしまい、自分の価値観を客観的に判断することができない。そして、他人や取り巻く環境に対して、反発を込めた単純な自らの価値観を押し付けがちだ。この映画はそんな憂鬱感を、ドイツの戦争の歴史や現在の都市ベルリンの混沌を背景にして、テンポよく展開されて小気味良い。モノクロ画面も、そして、途中で挿入されるスチール画面も美しくセンスが良い作品だ。


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